熱処理とは


「鉄鋼部品に命を与える技術…熱処理」

製鉄所の溶鉱炉で見られるように、硬く見える鉄も、赤熱すれば柔性となり、白熱すれば溶解します。製鉄所では鉄鉱石を製錬して銑鉄をつくり、さらに不純物を取り除いて少量の炭素(C)を加えて鋼(はがね)にします。 製錬されたばかりの鉄鋼材料は(例えば針金のように)柔らかく、削りや成形など部品形状を形づくる時の被加工性は良いのですが、例えば自動車部品など高い強度を必要とする機械部品として実際に使うには、柔らかいままでは使いものになりません。
加工成形された鉄鋼部品に命を吹き込み、機械部品として実用に耐える硬さと強さを与えるのが熱処理です。焼入・焼戻し、焼なまし、焼ならしといったさまざまな熱処理を行うことで、柔らかくしたり、硬くしたり、強靭にしたりと、目的に応じたさまざまな特性を引き出すことができます。すなわち熱処理とは熱の与え方、奪い方、温度と時間を的確に制御することにより金属の体質改善を行うことなのです。

熱処理とはの図

「硬さと靱性を両立させる技術…表面熱処理」

同じ熱処理でも、主に金属の表層部分の体質改善を行うのが表面熱処理です。
例えば、自動車のエンジン出力を駆動力に変換するトランスミッション歯車は、表面には滑りや転がりの摩擦に耐え、疲労破壊の起点にもなる表面の欠損を防ぐ「硬さ」が必要ですが、各々の歯は大荷重を繰り返し受けるため衝撃に耐える高い「靱性」も確保しなければなりません。しかし、元来金属は硬いほどもろくなる性質を持つため、ただ硬くしただけでは靱性が足りなくなり、急激に強い力が加わった時に、割れたり折れたりしてしまいます。「表面は硬く(耐摩耗・耐疲労強度)」「内部は適度に柔軟で靱性を保つ(耐衝撃強度)」この相反する特性の両立を可能にするのが表面熱処理なのです。
表面熱処理という言葉は日常生活ではほとんど聞かれることはありませんが、自動車部品を筆頭に、私たちが日常使用する製品の、機械的に耐摩擦性を要求される部品のほとんどにこの技術が活かされています。

熱処理とはの図